本学会について

設立趣旨

ヒューマンライブラリーは、2000年にデンマークの若者たちが、北欧最大の音楽祭であるロスキレ・フェスティバルで始めた「人を貸し出す図書館」です。障がい者、ホームレス、セクシャルマイノリティなど、社会のなかで誤解や偏見を受けやすい人々が「本」になり、一般「読者」と対話をするこの「図書館」は、欧州評議会(Council of Europe)を巻き込みながら発展し、瞬く間に世界中に広がりました。現在では、70か国以上で開催されています。

私たちは、ヒューマンライブラリーが人々を結び付け、偏見の低減に資する活動であることを深く認識し、多様性に開かれた社会の実現をめざして、ヒューマンライブラリーの更なる普及と発展を目的に、日本ヒューマンライブラリー学会(Human Library Society of Japan)を立ち上げることにしました。日本でのヒューマンライブラリーの活動基盤として、実践・研究活動の蓄積だけでなく、ヒューマンライブラリーの開催支援や受託開催事業なども行います。また、会員間ならびに世界各地のヒューマンライブラリーの関連団体との連携や情報交換も行い、ヒューマンライブラリーの発展に努めます。

ヒューマンライブラリーが日本で初めて行われたのは、2008年12月です。東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍研究室が、京都で開催しました。その後は、デンマークにあるヒューマンライブラリー本部と連携した中邑研究室が日本支部の機能を担い、ヒューマンライブラリーの中核的役割を担っていました。しかし、2012年初めに中邑研究室がその活動を停止した後は、日本におけるヒューマンライブラリー活動の中核的機関はなくなっています。

その一方で、ヒューマンライブラリーは多くの大学、民間・市民団体、個人によって開催されてきました。そして、2016年10月9日に私たちは「ヒューマンライブラリー研究大会」を開催しました。ここでは、日本各地でヒューマンライブラリーを開催してきた方々が初めて集い、様々なヒューマンライブラリーの目的、方法、形態を学びあいました。この大会に参加いただけなかった方の中にも、ヒューマンライブラリーの実践者や研究者が、全国各地に多くいることも確認できました。

私たちは、日本ヒューマンライブラリー学会が教育者や研究者のみならず一般市民の誰もが参加できる敷居の低い団体として、学校や地域社会、企業組織などの異文化間の人材育成等に貢献できる団体になることを願っています。本学会の名称は「学会」ですが、この活動の趣旨にご賛同いただける方なら誰でも参加することが出来ます。奮ってご参加ください。

2017年5月6日

ヒューマンライブラリー創始者のロニー・アバゲール氏による、日本ヒューマンライブラリー学会へのメッセージ

コペンハーゲン(デンマーク)ワールドカルチャーセンターにて

「本」を表紙で判断してはならない。これは、ヒューマンライブラリーのスローガンとして我々が使ってきた、世間でよく知られている言葉です。我々の務めは、困難で発言しにくい話題について、安心して対話できる場所をつくることです。

より思いやりがあり、開放的で寛容な社会を目指して、この活動に携わり貢献してくださっている皆様に感謝申し上げます。

我々に幻想はありません。我々の目の前にある課題はとても難しく、「本」や「読者」として参加する人々だけでなく、関係するすべての人の社会的勇気を必要とします。

タブーに挑戦し、「本」の表紙を超えてその中にあるものを見つけても大丈夫だという空間をつくり出すためには、勇気が要ります。近親相姦の被害者が自らの知恵を共有すること。難民が戦争から逃れることについての重要な問いに答える場を提供すること。社会のなかの他のいかなる場所でも、人々ができないことを可能にする枠組みを促進すること。

それは、率直な問いを投げかけ、答えを知り、自ら進んで答えてくれる人々から、正直な答えを得ることです。

この重要で素晴らしい冒険の成功をお祈りいたします。勇気を持ち、あなたの社会の重要な課題に本気で挑む「蔵書」を集めることを忘れないでください。「読者」は真価を認め、「本」は栄え、社会全体があなたの活動から恩恵を受けることでしょう。

敬具
ロニー・アバゲール
ヒューマンライブラリー創始者